研究課題/領域番号 |
02670419
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研究機関 | 国立循環器病センター |
研究代表者 |
別府 慎太郎 国立循環器病センター研究所, 循環動態機能部, 室長 (40113500)
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研究分担者 |
宮武 邦夫 国立循環器病センター病院, 内科心臓血管部門, 部長
中谷 敏 国立循環器病センター病院, 内科心臓血管部門, 医員
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キーワード | 心筋潅流 / 心筋梗塞 / 冠動脈 / 再疎通 / 心エコ-図 |
研究概要 |
今年度の目的は人為的に調節された冠動脈の閉塞時間と、冠血流の再開にともなう心筋潅流および心室壁運動の回復の経時的な関連を動物実験により検討解明することである。心筋潅流の定量的評価には、心筋コントラスト法を用いた。この方法はコントラストエコ-剤の注入により冠潅流領域を染影させる手法であり、心筋への血流状態が診断できる。同時に電磁流量計にて冠動脈血流量を、カテ先マノメタ-にて大動脈圧、右房圧を、断層心エコ-図にて心室壁運動を計測評価した。冠動脈閉塞にはpneumoーoccluderを用いた。心筋コントラスト法は、超音波攪拌した人アルブミンを頸動脈より挿入したカテ-テルを用いて左冠動脈開口部に注入し、乳頭筋レベル左室断層像をVTRに記録し、心筋各部位でのコントラスト濃度時間曲線を画像処理装置により算出した。冠動脈血流量、心筋潅流、心室壁運動についてそれぞれコントロ-ル時、冠動脈閉塞中、再疎通直後、疎通後10分毎1時間まで、その後30分毎3時間まで検討した。実験を終了しえたのは雑種成犬23頭中6頭であった。冠血流は再疎通直後、コントロ-ル時の5.5倍に増加し、10〜15分後には概ね前値に復した。一方、コントラストの流出は再疎通後著しく低下し、その後10〜15分後にコントロ-ル値に復した。即ち、再疎通直後、冠血流量は増加したにもかかわらず、コントラストの流出は延長するという解離が見られた。再潅流直後のコントラストエコ-の流出の遅延度と冠血流の増加度の関係は逆相関があり、コントラストの流出が悪いほど冠血流の反応性充血による増加が少ないことが示された。虚血時間が長ければ、微小循環系に白血球塞栓や血管内膜の膨化崩壊などが生じるが、コントラストエコ-の流出遅延はその反映を示唆した。再疎通後の心室壁厚増加率の回復はそれより遅れた。その遅れ度も症例により大きく異なった。便宜的に壁厚増加率が20%に回復するまでの時間を壁運動の回復度とすると、再疎通直後のコントラストエコ-の流出時間が遅れる例ほど壁運動の回復時間が長いことが示された。微小循環の障害が強いものほど心筋機能の回復が遅れることは充分予想されるが、コントラストエコ-法はそれを具体的に表現したものと思わる。なお本法によれば単に冠潅流異常のみならず、心エコ-法で同時に心室壁運動異常が診断できるので、今回の目的に最も適した方法である。
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