ムコリピド-シス(ML)IIとIII型の病態の分子機構を解明するために、その欠損酵素である糖鎖リン酸化酵素をヒト組織から精製してその蛋白化学的解析を行っている。本年度は以下の事を行った。 1)UDPーGlcNAc:リソゾ-ム酵素GlcNAcー1リン酸転移酵素の精製 ラット肝より本酵素を精製する場合、ゴルジ膜を分離して可溶化後DEAEイオン交換、UDPーグルクロン酸セファロ-ス、アビジンーセファロ-ス、ゲル濾過のクロマトグラフィ-を用いて回収率5%、約3万倍に純化することが出来る。本方法をヒト肝に応用したところ、回収率0.5%で約1万倍の精製度であった。この低精製度の原因として、ヒト肝は剖検以外では得られないことから量的に制約を受けること、凍結組織はゴルジ膜の分画に低収率を招くこと、あるいは本酵素の不安定性などが考えられる。ヒト肝より部分精製した標品を用いてモノクロ-ナル抗体を作製中である。スクリ-ニングは酵素活性の沈降法で検索している。同様に、ラット肝より高度に精製した標品に付いてもモノクロ-ナル抗体を作製している。これは、ヒトとラットで本酵素の活性部位が共通である事が予想され、従ってラットに対する抗体がヒトの抗原(酵素)の認識に使用できる可能性があるからである。MLーIIとIII型における酵素活性と蛋白量の相関に付いては、抗体が未作製のため蛋白量の分析は未達成であるが、MLの繊維芽細胞及び組織(脳、肝、腎)の活性測定は既に達成している。 2)培養細胞を用いた本酵素の寿命や代謝回転速度の追究は抗体の作製の後達成される。
|