研究概要 |
ムコリピド-シスII型(Iーcell病)とIII型で欠損、あるいは活性の発現不全を示すリソゾ-ム酵素糖鎖リン酸化酵素、GlcNAcー1ーphosphotransferase(GNPT)は、正常組織ではその発現量が低いことや不安定であること、また、活性測定に用いるリン酸供与体([βー ^<32>P]UDPーClcNAc)を合成しなければならないことなどから精製が遅れ、その蛋白化学的な解析は皆無であった。従って、II型やIII型の酵素学的な病態解析、あるいは本疾患における酵素の動態は不明である。本研究はこれらの問題を解決すべくGNPTを精製し、その蛋白化学的な追究を目的として、規定の年度内に以下の事柄を明らかにした。 (平成2年度)1.GNPTはヒト白血病細胞や血清、あるいは肝癌組織で正常対照に比較して顕著に高活性を示し、酵素の精製源として癌組織が有効である事が明らかになった。実際に、ラット繊維肉腫細胞(KMTー17,北大で樹立では正常ラット肝に比べて20倍の高い非活性を示し、この腹水化細胞でも高活性を維持していたので、これを用いてGNPTのより簡便な精製法を検討している。本方法が成功すれば、ヌ-ドマウス移植ヒト癌組織に適用できる可能性がある(一部、平成3年度)。2.ラット肝より本酵素を高度(約30万倍)に精製し、それに対するポリクロ-ナル抗体を作製した(論文投稿準備中)。本抗体はしかし、ヒト組織のGNPTとは免疫学的に反応しなかった。(平成3年度)1.ラット肝を用いた本酵素の精製法をヒト肝に適用して本酵素の精製を試みたが、約1万倍の精製度(3回施行)に留まった。原因として、ヒト肝の新鮮標本あるいは不凍結組織を得ることが困難であることが挙げられる。2.GNPTはUDPーGlcNAcとマンナンを基質とするが、[βー ^<32>P]UDPーGlcNH_2とマンナンのアジ化サリチル酸の誘導体を用いて、光親和標識法によるGNPTの検出法を確立している。これに依って上記病態の本酵素を解析している。
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