研究概要 |
【緒言】IgA腎症におけるIgA-Fibronectin複合体の検出は,病因と共に糸球体IgA沈着の機序を考える上で興味ある所見であったが,特異性,感度の点からは優れたものではないことがわかった(平成3年度まで).しかし,この検出法はfibronectin(以下FN)のgelatin結合domainを利用しているのであり,他のdomainを利用した検出に関しては不明である.一方,関節リウマチ患者滑膜液内においては,FN分子が断片化することによって免疫担当細胞の活性化を助長している報告が見られる.今回は,患者血清Fを単離し,IgA患者に特異的な断片化が生じているのかどうかを検索した. 【方法】腎生検で確認されたIgA患者10例について gelatin,heparin-affinityにてFNを単離,5-20%SDS-PAGE,銀染色を行ない正常者との比較を行なった.一部患者の単離FNについて,4種の抗FN モノクロナール抗体(Takara)を用いてWestern blotを行なった. 【結果】銀染色で見た血清由来の単離FNは,正常者を含めてdegradationが著明で,主要なbandは約70kdであり,subtilisin処理fibronectinで認められたbandと同位置にあった.Gelatin-affinity処理FNにおいては正常者,患者の差は認められなかった.Heparin affinity処理FNの銀染色では,全ての患者に観察された約116kdのbandが正常者では欠如していた.この相違はWestern blotではC末端domainを認識するモノクロナール抗体(FN1-1)の結合性と一致した.【結論】IgA腎症患者血清単離FNは正常者と異なった断片化パターンを有していた.
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