研究課題/領域番号 |
02670423
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
小児科学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮林 重明 東北大学, 医学部, 講師 (20174203)
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研究分担者 |
花水 啓 東北大学, 医学部附属病院, 医員
遠藤 仁司 自治医科大学, 助手 (50221817)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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キーワード | ピルビン酸脱水素酵素欠損 / 遺伝子解析 / 塩基挿入 / x染色体の不活化 / cDNA / SV40 / クロ-ン化細胞 / ASOハイブリダイゼ-ション |
研究概要 |
E1欠損症5例の分子遺伝学的解析を行った。蛋白ブロット法ではE1α蛋白、E1β蛋白の低下している例1例、E1β蛋白のみ低下している例1例、E1α蛋白、E1β蛋白とも正常対象と差を認めない2例である。まず5例の患者線維芽細胞よりmRNAを抽出し、RNAブロットを施行した。その結果5例の患者線維芽細胞では各mRNAともその大きさ及び発現量に異常は認められなかった。次に抽出したポリA+RNAから逆転写酵素を用いてcDNAを合成し、PCRにより各々のE1α及びE1βcDNAの遺伝子増幅をおこない、この増幅産物を用いて直接塩基決定法にて塩基の一次構造を決定し、塩基変異を同定した。E1α蛋白のサイズの異常を認めた例はE1αcDNA上に4塩基欠失を、E1α蛋白、E1β蛋白の低下している症例ではE1αcDNA上で4塩基挿入が認められた。また蛋白ブロットにてE1β蛋白のみ低下した例でも、E1αcDNAにてC214→T(Arg72→Cys)の置換が認められたが、E1βcDNAの塩基異常は認められなかった。これらの結果よりE1α蛋白の異常がE1β蛋白を不安定化させたもので、ピルビン酸脱水素酵素ではE1α蛋白がE1β蛋白の安定性に深く関与している可能性が示唆された。女児での発症の検討は、cDNAとゲノムDNAで変異遺伝子周囲をPCRで増幅し、ASOハイブリダイゼ-ションをおこなった。cDNA上は変異遺伝子のホモ接合体で、ゲノムDNAは正常とのヘテロ接合体を示した例と、両者でヘテロ接合体をとった例があったが、培養線維芽細胞をSV40でライン化した後、選択メジュウムでクロ-ン化したところ、正常活性を持つ細胞と、活性のない細胞とが得られた。しかも、正常活性を持つ細胞のcDNAは正常アレルのみで、活性のない細胞のcDNAは変異アレルのみであった。以上のことから女児での発症病態はX染色体の不規則な不活性化によることがわかった。また我々の経験したいずれの例でも、両親には同変異を認めず突然変異と考えられ、本疾患の変異発生の特徴と考えられた。
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