研究概要 |
平成2年度の研究の結果、GCによる糖リン酸の分析にはケト-スリン酸等の定量性に問題があることが判明し、GC以外の測定法の検討を行った。 まず、fast aton bonbardment and tandem mass spectrometry(FABーMS/MS)を用いた測定の検討を行った。この方法では、グリセリンをマトリックスとして使用し、生じる疑似分子イオン[MーH]^ーから更にCIDにより娘イオンを生成させ、糖リン酸に特異的な娘イオンであるm/z95のイオンをモニタ-しておき、親イオン強度を測定する。高濃度の糖リン酸溶液を使用すると、確かに疑似分子イオンが観測され、また、m/z95の娘イオンも生成したが、これらのイオン強度はかなり低く、定量性は充分とはいえなかった。 次に、ionspray liquid chromatography/tandem mass spectrometry(API/LC/MS/MS)を用いた測定の検討を行った。LCでの分離に関しては、多種の糖リン酸や糖について充分な分離を得ることが困難であった。そこで、まず、LC分離を行わず、シリンジポンプで注入を行う方法でのイオン化と感度の検討を行った。この方法で生じる疑似分子イオンはFABーMS/MS法での疑似子分イオンよりはるかに強度が高く、塩の付加した疑似分子イオンが生じるという問題があるものの、MS/MS分析が充分可能であることが示された。但し、fructoseー1,6ーdiphosphatase欠損症患者の尿サンプルの分析では、イオン交換樹脂による酸分画の抽出を行った後でも、fructoseー1,6ーdiphosphateを同定する事が出来なかった。これは、LCによるピ-ク形成を行っていないことで濃縮が不十分であるためと考えられ、今後LC分離と結合した検討を行う予定である。
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