研究概要 |
生後2,10,30及び50日目のハムスタ-の右大脳皮質内に、2TCD_<50>(10μ1)のムンプスウイルスを接種した。対照群としては、同日齢のハムスタ-に同量のMEMを実験群と同様の方法で接種したものを用いた。生後2日目接種群については、接種後2,3,4,5,6,7,10,14,20および30日目に脳を採取し、一般組織学的検索、ムンプスウイルス抗体及びGFAPの免疫組織化学的検索を行った。 その結果、(1)ウイルス接種後3〜5日目になると、大脳前額断により肉眼的観察では、ほぼ全例に側脳室の拡大が認められた。(2)一般組織学的検索では、接種後3日目より脳室上衣細胞表面に炎症細胞浸潤が見られるようになり、5日目より上衣細胞が変性、脱落し始めた。その後、上衣細胞の脱落は、脳室拡大と並行して、側脳室から第三脳室、中脳水道及び第四脳室へと進展した。(3)接種後の脳内におけるムンプスウイルスの初期感染部位や、その後の感染の進展などに関する、抗ムンプスウイルス抗体を用いた組織化学的検索では、接種後2日目より一部の脈絡叢、および側脳室、第三脳室、中脳水道、第四脳室などの一部の上衣細胞にムンプス抗原が認められるようになった。接種後4日目になるとウイルス抗原は殆どすべての脳室系上衣細胞で陽性となり、さらに脳室に近接した一部の神経細胞にも抗原が見られるようになった。しかし、10日目以後になると、これら上衣細胞の殆どは壊死、脱落した。また、残存する上衣細胞でもウイルス抗原は減弱し、14日目には殆ど観察されなくなった。(4)GFAP免疫染色によるグリア成分の検索では、接種後5日目より側脳室や中脳水道の上衣下にGFAP陽性細胞が増加し始め、10日目になるとグリア成分の増加はさらに著しくなり、中脳水道は狭窄または閉鎖した。
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