研究概要 |
初年度はムンプスウイルスおよびパラインフルエンザウイルス3型を新生仔ハムスタ-の脳内に接種することにより,水頭症の発生頻度,ウイルス感染細胞の局在,脳室系の変化などを検索した.最終年度は,これらのウイルスを妊娠母獣に接種した場合,経胎盤的に水頭症が惹起されるか否かを検索した. 7匹の妊娠ハムスタ-を用い,妊娠11,12,14または15日目に1.0×10^8pfuのパラインフルエンザウイルス3型を0.5ml頸静脈内に接種し,出生仔獣を生後13日から17日目まで観察した. その結果,妊娠11日または12日目に接種した場合には全ての胎仔は死亡・吸収された.妊娠14日または15日目に接種した場合には28匹の新産仔がえられ,その内16匹が2週間以上生存しえた.この16匹のうち3匹で,生後1週目頃から頭蓋の膨隆が認められるようになった.14日目には頭蓋が著明に膨隆しており,脳を摘出すると頭頂から後頭にかけての大脳皮質は紙状に菲薄していた.組織学的に観察すると,小脳虫部は尾側に圧迫・延長し,ArnoldーChiari type 1様所見を呈していた.側脳室は著しく拡大し,上衣細胞は脳室系全体で剥離・消失していた.また,皮質幅は正常の1/3〜5になっていたが,層構造はほぼ保たれていた.しかし,海馬や脳梁は消失していた.中脳水道は癒着・狭窄または閉鎖し,数個の細管状となり,いわゆるフォ-キング状を呈していた.
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