研究概要 |
本年度はインスリン依存型糖尿病(IDDM)の動物モデルであるBBラットを用い、免疫調節剤の一つであるβー1,3DーglucanによるIDDMの免疫療法の可能性を検討した。雄性BBラットに5週齢よりβー1,3Dーglucan1mg/kg/週を20週間静脈内投与し、顕性糖尿病の発症率、膵島炎の出現率、リンパ球サブセットの変化を検討した。対照BBラット群では顕性糖尿病の累積発症率および膵島炎の出現率が44%(13/30)、および76%(13/17)であるのに対してβー1,3Dーglucan投与BBラット群ではこれらがそれぞれ7%(2/30)および21%(5/24)に有意に抑制された(P<0.005)。 一方、βー1,3Dーglucan投与によりリンパ球サブセットには、変化は認められなかったが、全白血球数、リンパ球数が有意に増加しており(P<0.01)、βー1,3Dーglucanによる糖尿病抑制効果はILー3を介している可能性が示唆された。これらの動物実験の結果にもとづいて、同意に得られたIDDM患者に予備的にβー1,3Dーglucanの投与を行ったところ完全寛解の得られた例やインスリン投与量が極めて少量に抑えられた例が観察され、IDDMの免疫療法の可能性が示唆された。 今後、BBラットにおけるβー1,3Dーglucanの糖尿病抑制効果の免疫学的機序を更に究明するとともに、IDDM患者に対するβー1,3Dーglucanの臨床応用の準備を進める予定である。
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