麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチン接種後の無菌性髄膜炎患者の免疫機能の検討 研究目的: 麻疹・ムンプス・風疹の弱毒生(以下MMR)ワクチンを混合し同時に接種しても、それぞれのウイルスに対する抗体獲得率や獲得抗体価についてはワクチンを単独で接種した場合と大差のないことが報告されている。しかし抗体と同様にウイルスの感染防護機構に重要な役割を果たしている細胞性免疫機能が、MMRワクチン接種の際に抑制されているか否かという問題点についてはこれまで知見のないのが現状である。この研究ではMMRワクチン接種後に無菌性髄膜炎(以下MMR髄膜炎と略す)を合併した患者のムンプスウイルスに対する特異的細胞性免疫機能の有無について検討した。 結果と考察:札幌医科大学小児科および関連病院小児科に入院した7例のMMR髄膜炎患者と1例のムンプスワクチン接種後無菌性髄膜炎患者を対象とし、末梢血および髄液細胞中の単核細胞によるムンプスウイルス抗原に対するリンパ球幼若化反応を検討した。無菌性髄膜炎患者は、全例ムンプス抗原に対する幼若化反応を有しており特に回復期には強い反応を示した。また3例の髄液単核球でも明かな幼若化反応が認められた。この結果は、髄膜炎合併患者ではムンプスウイルスに対する細胞性免疫反応は正常に存在し作動していることを示している。今後は麻疹・風疹生ワクチンとの混合接種により、MMRワクチン被接種者においてムンプスウイルスに対する特異的免疫反応に抑制現象が惹起されるのか否か確認するため、MMRワクチン接種者とムンプスワクチン単独接種者における接種2ー3週時のムンプス特異的抗体産生反応と細胞性免疫反応の検討が必要であると考えられる。
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