研究概要 |
アミノヌクレオシド(AN)ネフロ-ゼラットにおける尿中蛋白排泄機序を解明する目的で,正常およびANネフロ-ゼラット腎より得た単離糸球体と髄質を用いてPGE_2 受容体を介するadenylate cyclase (AC)系およびphosphatidylinositol(PI)代謝回転系の変動を検討した。 その結果,以下の事が得られた。1)正常ラット腎におけるAC系のPGE_2に対する反応性は単離糸球体と髄質では異なっており,単離糸球体では髄質に比し低濃度のPGE_2で反応した。また,ANネフロ-ゼラット腎ではPGE_2によるcAMP生成反応の低下が認められた。2)正常ラット腎におけるPI代謝回転系は単離糸球体と髄質のいずれでも生理的濃度のPGE_2で作動し,この反応はdbcAMP添加により抑制された。一方,ANネフロ-ゼラット腎ではPI代謝回転系のPGE_2に対する反応性は亢進していたが, PGE_2無刺激状態(basal level)のPI代謝回転系は抑制されていた。3)ANネフロ-ゼラット腎におけるPI代謝回転系やAC系の変動は尿中蛋白排泄の増域と密接に対応していた。 以上より,AC系のPGE_2に対する反応性は糸球体と髄質では異なっており,ANネフロ-ゼラットの尿中蛋白排泄機序の一因として糸球体におけるPGE_2受容体を介したcAMP生成抑制の関与が推察された。また,ANネフロ-ゼラットの尿蛋白消失時期においてはPI代謝回転系のbasal levelは回復したがPGE_2に対するPI代謝回転系の反応性は亢進した状態にあり,これはPI代謝回転系の変動がネフロ-ゼの再発をもたらすことを示唆する一つの所見であると考えられた。
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