研究概要 |
〈目的〉種々のミオパチ-において、カルシウム(Ca)が骨格筋細胞に対し重要な役割を果たしていると推測されている。この研究ではそれを明らかにするため、高クレアチンキナ-ゼ(CK)血症を生ずる程度の低Ca状態のモデル動物を作製し、生化学的・形態学的検討をした。〈方法〉3週齢のラットを2群に分け、コントロ-ル(C)群を標準食で、実験(E)群をビタミンDCC3DD(V.D)およびCa無添加の標準変型食で飼育した。飼育開始後、各週毎に全麻下で心穿刺にて採血し、血漿Ca,Caイオン(i.)(Ca イオンメ-タCAIー101で測定)、CK等を分析した。E群の一部(E'群)に対し、標準食のみ1週間(E'0)、更に活性型V.Dで1週間(E'1)、2週間(E'2)治療しCa等を測定した。同時に各群の大腿筋を採取し、形態学的検討を行なった。〈結果〉血漿CaとCa i.をE群(n=26)とC群(n=17)の比(E/C比)で見ると、飼育期間1週が69%(Ca7.2/10.4),60%(Ca i. 2.8/4.7); 2週45%(4.7/10.4),41%(1.8/4.4);3週46%(4.6/10.1),49%(2.0/4.1);4週43%(4.5/10.5),39%(1.8/4.6);5〜6週34%(3.7/10.8)(Ca i.は未測定)とE群はCa,Ca i.共に著明に低下した。CKーMM(筋型)をE/C比でみると1週間193%(1421/736); 2週間484%(1777/367); 3週510%(1193/234); 4週626%(1741/278); 5〜6週895%(1450/162)とE群のCKーMMが上昇したが、ばらつきもあった。治療したE'群のCaをE/C比で見た所、E'0(n=2)は88%,E'1(n=4)は102%,E'2(n=2)は115%であった。飼育開始が6,9,11週齢(変型食は前2者が2週間、後者が4週)の場合、CaのE/C比は、81%,86%,102%であった。形態学的には、H.E染色にて光顕で飼育開始2,3,4,6週の筋肉を検索したがE,C群間に差が見られなかった。一方、飼育6週のE群を電顕で検索した所、筋小胞体が明らかに肥大していた。〈結論〉私達の方法によるラットは低Ca血症性ミオパチ-の動物モデルになり得ると考えられる。
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