研究概要 |
神経芽腫(NB)は,神経冠より発生する小児固形悪性腫瘍である。我々は,in vitro でNBの神経やSchwann細胞への分化をすでに明らかにしてきた。今回NB細胞が,平滑筋のマ-カ-を有することを始めて明らかにした。 我々の研究室で継代培養中の17種のうち3種のNB株は,紡錘形の神経細胞のみならず,flatーepithelial(別名S)細胞を混ずる。このS細胞は,平滑筋細胞に特異的とされるαーsmooth muscle actinと,心筋,平滑筋と骨格筋に特異的とされるdesminを持つことを,間接蛍光抗体法や二次元Western blot法で証明した。さらにS細胞は,Northern法でαーsmooth muscle actinmRNAを有することを明らかとした。平滑筋マ-カ-を持つNB細胞の存在は,発生学的に神経冠は大血管の平滑筋細胞に成長・分化するとした,LeDouarinらの報告と一致する。またNBが何らかの培養条件で平滑筋細胞に分化する能力を持っていることを示唆する。 神経芽腫は,1)臨床経過中分化と成熟がおこり,腫瘍の自然退縮がみられる。2)1歳以下の進行性NB(病期IVS)は,1歳以上の進行性NB(病期IV)と異なり,予後が明らかに良い。しかし分化・成熟と退縮の機序は,よく分かっていない。 NBが平滑筋マ-カ-を持つ(平滑筋細胞と考えられる)細胞に,どうしてinterconversionするかを明らかにすることは,臨床上ユニ-クなNBの特性を解明するうえに役立つと考えられる。今後TGF,FGF,PDGFなどの中胚葉分化因子を用いて,in vitroでNB平滑筋への分化を誘導し,その機序を明らかにしていきたい。
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