研究概要 |
神経冠は,末梢神経細胞,Schwann細胞メラノサイトと大血管を含む外胚葉性中胚細胞に成長・分化する。神経冠由来の腫瘍である神経芽腫細胞株には2つの形態学的に異なる細胞成分,すなわちneuroblastic(N)細胞と扁平上皮細胞成分であるsubstrateーadhesive(N)細胞が存在する。我々は,17種の神経芽腫細胞株を,種々の細胞骨格蛋白に対するモノクロ-ナル抗体を用いて,間接蛍光抗体法で解析した。その結果3種の細胞株(KPーNーSI,KPーNーYNとSMSーKCN)では,αーsmooth muscle actinが陽性であった。また1株(KPーNーSI)では,desminが陽性であった。ついでこれらの3親株より,NまたはS型細胞から成る8種のクロ-ン株を樹立した。各クロ-ン株の親株由来は,マ-カ-染色体の存在によった。αーsmooth muscle actinとdesminの陽性は,2次元Western blot法でも確認された。またS型クロ-ン神経芽腫株では,ヒトαーsmooth muscle actinに特異的なcDNA probe(pSH αーSMAー3'UT)を用いたNorthern blot法でαーsmooth muscle actin mRNAがみられた。以上の結果より,神経芽腫は神経細胞,Schwann細胞とメラノサイトの他に,平滑筋細胞マ-カ-を持つ細胞に分化する可能性が示された。
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