研究概要 |
腫瘍細胞にしばしば認められるフィブリンの沈着に注目し、特に外因系凝固反応の開始機構を検索する目的で豊富な細織因子(TF)活性をもつJ82細胞と第VII因子(VII)、活性化第VIIa因子(Vlla)の相互作用について検討しその結合は特異的で、Ca依存性がありそのRdは3.20nM、3.25nMで細胞1個あたりの結合部位は256,000,320,000であった。組識因子に対する抗体で細胞を処理するこれらの結合は阻害された。J82に結合したVIIとVIIaの機能を第X因子活性化反応でみるとXa生成のhalf maximal pointはそれぞれ3.7nM,3.2nMであった。また抗組識因子抗体によりXaの活性化は完全に阻害された。次に私はこの結合がCa依存性であることに注目し、αーcarboxyglutamic acid domainを欠くVIIa(GOーVIIa)とJ82細胞との結合およびその機能について検討した。方法は12ーwell plate上で培養したJ82細胞に^<125>Iで標識したVIIa、GOーVIIaを加え、インキュベ-ト後、十分洗浄し、そのradioactivityをカウントした。結合したリガンドの機能については、J82細胞に結合したVIIa、GOーVIIaによる第X因子の活性化をSー2222を用いたChromogenic assayにて測定した。結合はGOーVIIaとJ82細胞表面のTFとの結合は特異的濃度依存的で、hyperbolicな曲線を示し、約10nMで飽和に達した。GOーVIIaのJ82に対するKdは25nMで細胞1個あたりの結合部位は10,000であった。VIIaの細胞表面TFへの特異的な結合に対して、GOーVIIaの結合は抗TK抗体により阻害されず、カルシウムの濃度によっでも影響されなかった。またGOーVIIaは^<125>IーVIIaの結合を阻害しなかったし、逆に^<125>IーGOーVIIaの結合はVIIaにより阻害されなかった。さらにJ82に結合したGOーVIIaはまったく第X因子を活性化しなかった。以上よりαーcarboxyglutamic acid domainはVIIaの細胞表面TFへの結合に不可欠であると考えられた。
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