研究概要 |
平成3年度までの研究成果で各腫瘍細胞は腫瘍細胞上のProthrombinase Conplexを活性化し、強さにそれぞれ差はあるものの容易にトロンビンを生成すること、またVa因子タンパクを産生しないJ82,CAPAN-2細胞が外因性Va因子の非存在下でXa因子は細胞上で機能を発揮し、プロトロンビンの活性化を高めることからX,Xa因子の腫瘍細胞への結合について検討した。 (1)HepG2,J82へのX,Xa因子の結合 X因子はV/Va因子を産生するHepG2,産生しないJ82への特異的な結合はみられなかったが、Xa因子は両細胞に特異的に結合した。Koは1.66nM(HepG2)、1.64nM(J82)で、Binding sites/cellは566,000(HepG2)、28,000(J82)と両細胞に差があった。 (2)結合した10a因子の機能 結合した10a因子のproteolytic activityを調べるためにプロトロンビンの活性化を検討した。トロンビンの生成量は10a因子の濃度とともに増加し、両細胞とも約5nMで飽和となったが、HepG2の方がJ82より約5倍トロンビン生成量が多かった。 (3)Va因子の影響 両細胞を抗ヒト第V因子1gGで処理し、結合能とその機能を調べたところ、HepG2では抗体の濃度依存性にプロトロンビンの活性化が阻害されたがその結合は阻害されなかった。J82では結合も活性化も影響を受けなかった。以上よりHepG2ではXa因子はその機能が阻害されたことよりV/Va因子の近傍にXa因子の結合部位があると推測され、内因性のV/Va因子はXa因子の直接のレセプターではないことが示唆された。外因性のVa因子は両細胞上でのXa因子の結合にほとんど影響を与えなかった。プロトロンビンの活性化では、J82は5a因子の濃度に依存して増大した。
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