1.ヒト臍帯血由来の赤芽球についての研究 (1)細胞伸展が赤芽球に与える影響:適切な圧力による伸展は赤芽球の世代時間、増殖能に影響しないことが確かめられた。 (2)赤芽球の分化の指標:Soret band光線による撮影で映像化される細胞質のヘモグロビン量の定性的評価が、最も特異的であるが、分裂直前および直後の細胞の大きさも指標となり得ること、赤芽球の最終世代においては、さらに運動の活発さ、脱核が指標となることが示された。 2.Congenital dyserythropoietic anemia type III(CDA III)赤芽球の形態異常の発現過程についての検討 CDA III赤芽球の大多数は正常赤芽球と同様に3〜6回分裂し、最終世代まで分化することが認められた。異常赤芽球の形成は次ぎの2つの過程によることが示された。 (1)比較的多くみられる様式:前赤芽球の核の一部に境界鮮明な明るく見える領域が出現する。この領域は、娘細胞、孫細胞にも出現し、数を増し、広くなり、硬さを増す。孫細胞では核の大部分が、この明るい小領域によって区分され、核分葉化が起きる。これと同時に細胞質ヘモグロビンの増加、運動の激化が起る。この孫細胞は通常ならば分裂する直前の大きさ迄大きくなるが分裂はしない。このことは、この孫細胞が赤芽球の最終世代の前の世代に属し、これに最終の分化が出現したことを示唆する。 (2)稀にみられる様式:3極あるいは2極分裂後の細胞融合、分裂後、1つの娘細胞の急激な増大と他方の縮少、死亡。 (2)の場合にも、核の一部に境界鮮明な明るい領域の出現はみられるので、この現象が、異常形成機構の初期の重要な過程であることが推測される。電顕像からはこの過程は、核クロマチンの形成異常の可能性が考えられる。
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