研究概要 |
1.出生時の卵円孔部血流様式の推移と胎児循環遺残 卵円孔部の血流は,出生後早期に両方向性短絡(左ー右短絡有位)を示すが,その後,右一左短絡血流の出現頻度は減少する。一方,胎児循環遺残では,収縮,拡張の両時相に2峰性の右一左短絡がみられ,臨床所見の改善と伴に左ー右短絡有位に変化し,その後,卵円孔の閉鎖を認める。これらの結果から,出生後早期には,左室に比し右室の拡張性(コンプライアンス)の低下がみられること,胎児循環遺残では,その低下がより顕著であり,更に,右房,静脈系に比し左房,肺静脈系〓〓の低下が,拡張期,収縮期の右ー左短絡をひきおこす要因となっていることが示唆された。また,房レベルの短絡様式のドプラ心エコ-法による評価は,本症の治療,経時観察において有用な指標となりうることを示した。 2.胎児期〜出生後早期における左心拍出量の推移 左心拍出量は,出生前日(170±46ml/min/kg)に比し,出生1時間後(327±66ml/min/kg)に約2倍の増加を認める。その増加は,左室拡張末期容積,左室駆出率の増加に依存し,心拍数の影響はみられなかった。すなわち,1回拍出量の増加(1.21±0.33ml/kg→2.25±0.37ml/kg)に依存した。その後,96時間后における変化は明らかでなかった。 これらの成績は,出生後早期の心拍出量の変化にFrankーStaringの方則が重要な機転であることを示唆している。 3.正常新生児における筋性中隔欠損の頻度と経時的変化 出生後1週間内の頻度は約2%であり,3カ月以内にその80%は自然閉鎖し,1年後には90%に閉鎖を認めた。
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