研究概要 |
新生児における循環系adaptation機構について,ドプラ心エコ-法(カラ-表示法を含む)を用い検討し,次の如き新知見および成果を得た. 1.動脈管の閉鎖様式と機転 成熟児,未熟児動脈管の閉鎖へ向かう初期変化は管内の限局性突出像であり,酸素とプロスタグランディンのバランスがその進展に関与することが示唆された。 2.出生後の卵円孔部血流様式の推移と胎児循環遺残 卵円孔部の血流は,出生後早期に両方向性短絡(左ー右短絡有位)がみられ,その後右ー左短絡の消失を認めるが,正常新生児では出生4ー5日目においても約半数に小量の短絡が持続してした.胎児循環遺残では,収縮,拡張時相に2峰性の右ー左短絡がみられ,臨床所見の改善と伴に左ー右短絡有位となる.房レベルの評価は,本症の治療,経時観察において有用な指標となりうる. 3.胎生期〜出生後早期における左心拍出量の推移 左心拍出量は,出生前日(170±46ml/min/kg)に比し,出生1時間後(327±66ml/min/kg)に約2倍の増加を認める.その増加は,左室拡張末期容積,左室駆出率の増加に依存し,心拍数の影響はみられなかった.出生24時間後には,心拍数,左室拡張末期径の減少に伴ない左心拍出量の低下を認めた。その后,96時間における変化は明らかではなかった。これらの成績は,出生後早期の心拍出量の変化にFrankーStaringの方則が重要な機転であることを示唆している。
|