研究概要 |
小児慢性肝疾患の中で乳・幼児期に肝硬変並びに肝の線維化をきたすことの多い代表的な疾患である胆道閉鎖症の患児を対象にして,その腎合併症の検討を行った. 1979年1月より1989年10月までに順天堂大学附属病院の小児科および小児外科に入院となった本症患児120例のうち術後経過が十分に追跡しえた90例の病歴をretrospectiveに検討した.90例中40例(44.4%)で有意な血尿and/orタンパク尿の出現を認めた。詳細な内訳は,血尿単独19例,タンパン尿単独7例,血尿およびタンパク尿合併例14例である.90例のうち50例が死の転帰をとり,これらの患児は強い閉塞性黄疸を呈しており,より高率に尿異常を呈した(54.0%). 死亡例のうち28例で剖検腎組織が得られ,その評価を行った.全例で種々の程度の糸球体変化を認め,基質優位のメサンギウム増殖を認めた.糸球体病変を光顕にて3つに分類し,各症例の生前の血清検査結果との検討を行った.肝機能の低下を血清コリンエステラ-ゼ値の低下を指標とすると,糸球体病変の強い症例ほど肝機能の低下期間が長い傾向があった. 腎糸球体に沈着した各種免疫グロブリン・補体の検討では,26例中16例でIgAが,21例でIgMが主にメサンギウム領域に沈着しており,Hepatic Glomerulonephritisが本症患児に高率に生じていることが示唆された.
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