研究概要 |
既に胆道閉鎖症患児を対象として糸球体障害の合併頻度を検討してきたが,剖検腎組織の検討を施行し,1)生前の肝障害の程度と糸球体病変の相関,2)メサンギウムに沈着するIgA型免疫複合体のサブクラスの検討,3)腎障害の早期発見因子の検討等を施行した. 1)胆道閉鎖症患児は閉塞性黄疸により肝の線維化および肝硬変をきたすことより,肝の予備能を血清コリンエステラ-ゼ値で評価すると,本値が700IU/L以下に低下してから死に至るまでの期間と糸球体の組織変化の程度は有意に相関した. 2)メサンギウムに沈着するIgAでは,IgA_1が優位ながらIgA_2も見られ,これらはIgA_1のみ見られたIgA腎症や紫斑病性腎炎とは異なった結果であった.さらにsecretory componentも同部位に観察され,消化管由来の免疫複合体であることが推察された. 3)臨床のretrospectiveな検討では,一般の検尿にて血尿あるいはタンパク尿が発見された段階で既に糸球体の組織変化が見られていることより,prospectiveに尿中NAG活性,尿中β_2マイクログロブリン値,尿中微量アルブミン値の検討を行い,前2者が本症患児の尿細管障害の早期発見に,後者が糸球体障害の早期発見に有用であることが明らかとなった.
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