研究概要 |
小児の慢性肝疾患の患者はその頻度が余り多くなく,しかもその基礎疾患も多岐に及ぶことより,当初より我々の施設で比較的多く遭遇する胆道閉鎖症に続発する胆汁性肝硬変を主な対象とし,臨床検討を行なってきた.しかしながら,手術成績自体や術前術後管理の向上に伴って不幸にも死の転帰をとる症例が著減したため,剖検検体を前提にした検討は十分に施行しえなかった. 本年度新たに明らかにされた知見は, 1)手術時並びに剖検時の肝組織所見にて,肝硬変や肝の線維化の進行度と,剖検腎糸球体の組織障害の程度が相関し,閉塞性黄疸の遷延した症例や逆行性胆管炎が反復した症例では腎の尿細管間質領域の組織障害も伴っており,成人の所謂肝性糸球体腎炎と比べて進行が早いことが判明した. 2)各種血液生化学検査は腎障害の進行した症例でも軽微であり,腎障害の早期発見の指標とはなりえなかった.尿検査では,尿中NAG活性や尿中β2ミクログロブリンが異常を呈する例が特に黄疸の遷延した症例に多く見られたが,組織上の腎障害とは相関を認めなかった.尿中微量アルブミン値が組織変化を反映しており,唯一の指標となりうると思われた. という2点である.
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