研究概要 |
本研究はmyc系がん遺伝子の一つであるNーmycタンパクの免疫学的定量法を、平成2,3年度の2年間に開発し、神経芽腫のマススクリ-ニングなどに適用するための検討を行なうものである。このような全体的な目的の中で、本年度はNーmycタンパクの免疫学的定量法に必須な道具、1.Nーmyc特異抗原,2.panーmyc特異抗原,3.N・panーmycと融合蛋白,4.Nーmyc特異抗体,ならびに5.panーmyc特異抗体の5つを作製した。 1については、mycファミリ-の中でNーmycに特異的な領域(Gly161ーSer245)を選択し、遺伝子DNA上の相当する部分を大腸菌発現べクタ-(bcA200)に組換え、熱誘導によりNーmyc特異領域を含んだ融合タンパクの大量生産を試みた。その結果、Nーmyc特異領域を三重連(three tandem repeats)に組込んだ組換体において、安定した量のNーmyc特異抗原(分子量=39.6K)を得ることが出来た。2では、mycファミリ-に共通の領域をpanーmyc領域(Ser347ーCys456)として選択し、1.の場合と同様の方法でpanーmyc特異抗原の作製を試みた。この場合は、repeatsなしの組換体で安定なpanーmyc特異抗原(分子量=28.5K)が得られた。3.はNーmyc特異領域を含んだ組換え体に、更にpanーmyc領域を組込んで、同様にN・panーmyc融合タンパクの作製を試みた。この場合も2と同様、repeatsなしの組換体で、安定なN・panーmyc特異抗原(分子量=52.1K)を得ることができた。このN・panーmyc融合抗原を、Nーmycタンパクの免疫定量のための標準物質として用いることにより、抗Nーmyc抗体と抗panーmyc抗体の両方を用いた、高感度で特異性の高いサンドイッチ型のELISA法を確立するための準備が整ったことになる。 4,5の抗体については、単離精製した各抗原を各々家兎に免疫して、各々に特異的ポリクロナル抗体を得た。
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