研究概要 |
1.正常小児の血小板・凝固・線溶・内皮細胞由来分子マ-カ-の加齢による変化 新生児のβトロンボグロブリン,血小板第4因子,トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT),プラスミン・α_2プラスミンインヒビタ-複合体(PIC),フィブリン分解産物ならびに可溶性トロンボモジュリンの血中濃度は正常成人と比べていずれも高値であった。すなわち,新生児期は血小板・凝固・線溶系がいずれも活性化されていることが明らかにされた。一方,1歳以降の正常小児ではこれら分子マ-カ-の測定値は正常成人と有意差がみられず,加齢に伴う変動もとくに認められなかった。 2.正常小児の凝固制御因子の加齢による変化 新生児期のアンチトロンビンIII,プロテインC,プロテインSならびにヘパリンコファクタ-II値はいずれも正常成人と比べて有意に低値であった。しかし,1歳以降の正常小児では成人と差がみられず,加齢に伴う変化も認められなかった。 3.遠隔期川崎病罹患児の血液凝固学的動態 発症後1年以上を経た遠隔期川崎病罹患児を対象として、上記分子マ-カ-を測定した。急性期に冠動脈拡大性病変のエピソ-ドが認められた群と,全経過を通じて冠動脈病変が認められなかった群に分けて検討した結果,βトロンボグロブリン,血小板第4因子,フィブリノペプタイドA,TATは主として冠動脈病変群に異常高値を示す例が認められた。一方,両群で血小板凝集能の亢進が観察された。以上の成績から全身血管炎である川崎病に罹患した小児では,1年以上経過して心断層エコ-所見が正常化している例でもなお,血管壁の異常による血小板と凝固系の活性化が生じていることが示唆された。
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