研究概要 |
家塵中のダニと気管支喘息,アレルギ-性鼻炎との関係は確立された知見となっており,両疾患のダニ抗原による誘発試験は高い陽性率を示すことが知られている.アトピ-性皮膚炎(AD)においてもダニ抗原によるスクラッチテスト,皮内反応の陽性率は高く,ダニに対するIgEーRAST scoreも高値の症例が多い.しかし,ダニとADの関係を解明するにはダニ抗原でADの皮疹を誘発せしめる必要がある.これまでにわれわれのグル-プでは家塵中のダニであるDermatophagoides farinae (DF),Dermatophagoides pteronyssinus (DP)の粗抗原を用いてAD患者にパッチテストを行い,高率に湿疹反応の誘発を認め,組織にはダニ抗原が侵入してランゲルハンス細胞に捕捉されている像を免疫組織学的,免疫電顕的に明らかにした.平成2年度は同粗抗原でパッチテストを行い,経時的にダニ抗原の侵入を観察した.ダニ抗原を捕捉したランゲルハンス細胞はパッチテスト6時間後では表皮のみに,24時間後には表皮下層および真皮上層に,48時間後には真皮のリンパ球の細胞集団の辺縁に認められ,ランゲルハンス細胞は表皮でダニ抗原を捕らえ,真皮に浸潤してきたリンパ球に抗原提示を行なっていると考えられた.さらに本年度はDFの飽和培地よりフンの成分を分離し,Qセファロ-ズイオン交換クロマトグラフィ-,ハイドロフォ-ビッククロマトグラフィ-,金属キレ-トクロマトグラフィ-,ゲルろ過法を組み合わせてDF粗抗原の精製を行い,DFのmajor allergenとされているDer fl,Der f2を分離した.この両精製抗原を抗原の透過性を高めるため,10%dimethlsulfoxideに0.01%の濃度に混和し,AD患者にパッチテストを行なった.まだ少数であるが,明かな陽性反応が得られている.今後,症例を増加させ,また同パッチテストを気管支喘息などの他のアトピ-疾患にも行い,ADとのmajor allergenの違いについても検討したい.
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