研究概要 |
ヒトメラノ-マ関連抗原の1つである高分子メラノ-マ抗原(HMW-MAA)に対する単クロ-ン抗体(mAb,Ab1)を免疫原として作製した抗イディオタイプ(抗Id,Ab2)mAbを用いてメラノ-マ患者血清を解析した。その結果従来担癌患者にはHMW-MAAの免疫原はないと考えられていたが、抗IdmAbを用いることにより、メラノ-マ患者においても抗HMW-MAA抗体が微量であるが検出された。またこの抗体はメラノ-マの病期と関連していることが明らかとなり、予後判定に有用である可能性が示唆された。 抗IdmAbがinternal imageを有しているか検討した。抗IdmAbをマウスに免疫するとその血清中には培養メラノ-マ細胞と反応する抗体(抗々Id抗体,Ab3)が検出された。これはSDS-PAGEによりAb1と同一の分子を認識することが明らかとなった。さらにこの抗IdmAbで免疫したマウスの足に培養メラノ-マ細胞を接種すると、コントロ-ルに比べ有意に腫脹した。以上のことは抗IdmAbはHMW-MAAに対して液性免疫だけでなく、遅延型反応も惹起することが判明した。 また抗IdmAbを免疫原として抗々IdmAb(Ab3)を作製して、メラノ-マ凍結組織における反応性をAb1mAbと免疫組織学的に比較検討した。その結果、Ab3はAb1より反応性は弱いがほぼ同様の染色性を示した。これらの事実により、HMW-MAAを中心としてAb1,Ab2,Ab3がイディオタイプネットワ-クを形成していることがmAbを用いた解析により明らかになった。またAb2が免疫反応を惹起することはメラノ-マに対する癌能動免疫療法として有用である可能性を示唆する。 以上のデ-タは平成4年10月第51回日本癌学会総会シンポジウムTがn克服に向けて-免疫学の進展から見た展望-」で発表した。
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