研究概要 |
1.紫外線照射による動物(ホア-レスラット)皮膚結合組織の変化ー紫外線(UVB)をヘア-レスラット皮膚に1日1回約8カ月間照射を行い,これを光学顕微鏡および電子顕微鏡にて観察した。その結果,対照に比べて光顕レベルにおいて,真皮上層の弾性線維の中等度の増加と走行の乱れが認められ,また電顕レベルで,これら弾性線維の変性像が観察され,人間が長期間日光に暴露されたときに生じる日光弾力線維症の所見と類似した所見であることが判明した。このことから,この動物は日光弾力線維症の発生機序およびその病態を経時的に追求するのに適した動物モデルであることがわかった。 2.紫外線長期暴露による人真皮結合組織の変化ーこれを調べるため老人(70から104才の10人)の前腕伸側(日光露出部)と上腕内側(日光非露出部)の各皮膚を採取し,光学顕微鏡と電子顕微鏡を用いて追求した。また後者ではコラ-ゲンおよびエラスチンに対する抗体を用いて免疫電顕を行った。上腕皮膚の特徴として表皮直下の真皮が無構造物質の厚い層で占められ,この中およびこの下に表皮に垂直に走る細い弾性線維が存在し,これらはさらにその下の平行に走るより太い弾性線維に移行していた。一方,前腕皮膚の特徴として表皮直下の無構造物質は上腕に比べて薄く,この下に密集した多量の弾性線維が存在し,真皮中,下層にまで及ぶ場合が多かった。また真皮の厚さは上腕の方が前腕に比べてはるかに厚く,膠原線維はより多く存在していた。また電顕レベルでの観察では上腕では弾性線維中のamorphous materialの減少と細粒状物質の増加,前腕では同じく崩壊像が観察された。これらの変性物質は抗エラスチン抗体に反応することよりエラスチン由来であることが判明した。 3.今後これらの結合組織の変化につき,生化学的にも追求する予定である。
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