研究概要 |
造影剤による血中酵素に及ぼす影響について,昨年度は主として造影剤によるアセチルコリンエステラ-ゼの酵素活性阻害作用について検討した。アクセチルコリンエステラ-ゼ純物質のみでは,イオン系及び非イオン系の造影剤はいずれもアセチルコリンエステラ-ゼの酵素活性を低下させたが,血漿中など,アルブミン存在下では,その酵素活性が回復する事が認められた。今年度は,血圧を調節しているアンギオテンシン変換酵素に対するイオン系,非イオン系造影剤の影響について,血中アンギオテンシン変換酵素をモデルとして検討した。調製済みの造影剤の中には安定化剤としてEDTAが含まれ,アンギオテンシン変換酵素の特異的阻害剤であるカプトリルと同様にEDTAはアンギオテンシン変換酵素を直接阻害する事が知られている。従ってアンギオテンシン変換酵素の阻害については,安定化剤EDTAと造影剤そのものの化学毒性の2つの可能性が考えられる。血漿中およびEDTA,造影剤混和血漿中のアンギオテンシン変換酵素活性は,合成ペプタイド(HipーHisーLeu)を基質として,HPLCにより測定した。 EDTAを血漿に添加するとEDTAの濃度に比例して,血漿中のCaイオン濃度およびアンギオテンシン変換酵素活性も低下した。また,検討したイオン系,非イオン系造影剤においても,混和した造影剤の濃度に比例して,アンギオテンシン変換酵素活性は低下したが,Caイオン濃度の有意な低下は認められなかった。造影剤の化学構造の差遠なしに,同程度の血漿アンギオテンシン変換酵素活性低下を認めた事は,これらの製剤に共通して存在する安定化剤EDTAによるアンギオテンシン変換酵素阻害の可能性を強く示唆している。造影剤によるアンギテンシン変換酵素活性の低下は低血圧を〓〓し,ショックを発症させる原因の1つと考えられる事ができる。
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