肺局所換気能の検査には^<133>Xeや^<81m>Krなどの不活性放射性ガスが用いられているが、これらのガスは、肺検査用に特別に購入しなければならず、緊急の場合に調達ができない。そこで、エネルギー、半減期、化学反応性などの点ですぐれ、日常診療に最もよく使用されている^<99m>Tcによる換気検査が望まれていた。本研究では、^<99m>Tcを高温炉(るつぼ)でガス状にして吸入させ、換気分布を得る方法について研究することを目的としている。 今年度は、本研究課題の最後の年であり、テクネガスの臨床応用と有用性の評価に関して以下の点について研究を行った。 吸入方法:健常成人3名及び、各種肺疾患例(閉塞性肺疾患10名、肺塞栓症3名、拘束性肺疾患3名)を対象として、テクネガス検査結果を^<81m>Kr、^<133>Xe検査結果と対比検討した結果、肺塞栓症、拘束性肺疾患では同等の分布を示していたが、閉塞性肺疾患では、中枢気道に過剰沈着する例がみられた。しかし、このような症例でもテクネガスは末梢へも分布しており、換気異常の評価は可能であった。中枢気道への沈着状態を^<99m>Tc-エロゾルと対比してみると、テクネガスで少なく、換気分布 をより正確に把握できた。中枢気道への沈着率と呼吸機能検査との対比では、1秒率の低下とともに沈着率は増加していた。テクネガス分布は肺胞沈着後そのままの状態で安定しているので、SPECT像を撮るのに適している。そこで、テクネガス分布のSPECTをとり三次元画像を作成、換気状態を立体的に把握し、肺塞栓症の換気 血流ミスマッチなどについても検討した。その結果、従来のプラナー像に比較して、小さい病変の立体的把握が可能となり、診断精度の向上がみられた。 今後これらの知見を利用してテクネガスの臨床応用を広めて行く予定である。
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