アルツハイマ-病における中間径線維の機能的異常に関する研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670515
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 武田 雅俊 大阪大学, 医学部, 助手 (00179649)
• 研究分担者: 多田 国利 大阪大学, 医学部, 講師 (80135681) ; 播口 之朗 大阪大学, 医学部, 助教授 (10028459) ; 西村 健 大阪大学, 医学部, 教授 (70028455)
• キーワード: アルツハイマ-病 / 家族性 / 線維芽細胞 / 中間径線維 / 細胞骨格蛋白 / フォドリン / ビメンチン / 皮膚

研究概要

家族性アルツハイマ-病患者および非家族性アルツハイマ-病患者の皮膚から採取・培養した線維芽細胞について研究し、その細胞骨格関連蛋白について以下の知見を得た。
1.アルツハイマ-病線維芽細胞の細胞接着効率の低下は家族性アルツハイマ-病細胞において顕著に認められるが、非家族性アルツハイマ-病の細胞においても認められる。細胞骨格蛋白のうちで中間径線維であるビメンチンの配列は家族性アルツハイマ-病線維芽細胞では特徴的な配列異常が認められた。このビメンチン線維配列の異常は非家族性アルツハイマ-病の細胞では認められなかった。家族性アルツハイマ-病および非家族性アルツハイマ-病のいずれにおいても、ビメンチン蛋白そのものは変化しておらず、ビメンチン蛋白の細胞内代謝についても差異を認めなかった。
2.ビメンチン線維の伸長の速度を比較したところ,アルツハイマ-病細胞ではマイクロチュブルの崩壊後のビメンチン線維再配列の速度が低下していた。アルツハイマ-病細胞では、核周囲からビメンチン線維が伸長し、最終的に細胞膜の裏打ち構造と結合する過程に変化があるものと推定された。
3.細胞膜裏打ち蛋白であるフォドリンは、家族性および非家族性のいずれのアルツハイマ-病細胞においても分子量の大きなものの比率が正常細胞と比較して多く含まれており、フォドリン蛋白の細胞内での分解が阻害されていた。この結果からはフォドリン蛋白の細胞内代謝の阻害が推察され、フォドリンの代謝に関与している蛋白分解酵素活性の差異が示唆された。

研究成果

• [文献書誌] M.Takeda,M.Tanaka,T.Kudo,Y.Nakamura,K.Tada,T.Nishimura: "Changes in Attaching Efficacy and Cytoskeletal Proteins in the Fibroblasts from Alzheimer's Disease Patients" Jpn J Psychopharmacology. 11. 99 (1990)
• [文献書誌] T.Nishimura,M.Takeda: "Cytoskeletal Aberration in Alzheimer's Disease Fibroblasts" Clin Neuropharmacology. 13. 416-417 (1990)
• [文献書誌] M.Takeda,M.Tanaka,T.Kudo,Y.Nakamura,K.Tada,T.Nishimura: "Changes in Adhesion Efficiency and Vimentin Distribution of Fibroblasts from Familial Alzheimer's Disease" Acta Neurologica Scandinavica. 82. 238-244 (1990)
• [文献書誌] M.Takeda,T.Nishimura,T.Kudo,S.Tanimukai,K.Tada: "Buffy Coat from Families of Alzheimer's Disease Patients Produces Intracytoplasmic Neurofilament Accumulation in Hamster Brain" Brain Research.
• [文献書誌] M.Takeda,T.Nishimura,Y.Tatebayashi,T.Tanaka,S.Tanimukai,K.Tada: "Study of Cytoskeletal Proteins in Cultured Fibroblasts from Alzheimer's Disease" Acta Neurologica Scandinavica.
• [文献書誌] M.Takeda,T.Nishimura,K.Tada,T.Kudo,S.Tanimukai: "Inoculation Study of Alzheimer Buffy Coat into Hamster BrainーImmunohistochemical Characterization of Intracytoplasmic Neurofilament Accumulation in Neurons of the Lower Brain Stem Nucleiー" Dementia.