てんかん患者の聴覚認知機能の障害を調べるため両耳分離能検査を施行した。 1.対象は、側頭葉てんかん群22名(右焦点11名、左焦点11名)、非側頭葉性部分てんかん群15名(右焦点9名、左焦点6名)、原発部分てんかん群21名、正常対照群20名であった。焦点部位を発作間欠期の脳波により、右焦点例と左焦点例に分けて検討した。被験者は、すべて右手利きで、聴力障害のないこととCT検査で明かな器質的損傷がないことを確かめた。検査は、杉下の作成した3対の異なる数字を左右の耳に同時に呈示する方法によって行われた。刺激間隔は10秒、刺激音の強さは約70dB、刺激総数は、72組で、左右の語頭のずれは100msec以内であった。結果を左右の正答率と大脳半球優位性の指標とされる右耳優位度にに分けて検討した。 2.結果:原発全般てんかん群は、正常対照群と比較して左右の正答率と右耳優位度に有意な差を認めなかった。それに対し、側頭葉てんかん群では、正常対照群と原発てんかん群と比較して左右の正答率の有意な低値と右耳優位度の有意な高値を認めた。さらに非側頭葉性部分てんかん群は、正常対照群と原発てんかん群と比較して有意差はないものの正答率の低値傾向と右耳優位度の高値傾向を認めた。側頭葉てんかん群の右焦点例は、左焦点例より正答率の低値傾向、左焦点例は、左焦点例より右耳優位度の高値傾向を示し、非側頭葉部分てんかんの左焦点例は、右焦点例より正答率の低値傾向、左焦点例は、右焦点例より右耳優位度の高値傾向を示した。以上のことから、聴覚認知能力の低下と左右半球機能障害は、側頭葉てんかん群において著明に認められ、次に非側頭葉性部分てんかん群であった。原発全般てんかん群は正常対照群と聴覚認知において差がなかった。
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