研究概要 |
LTP研究から、シナプス後側のカルモジュリンキナ-ゼIIやCキナ-ゼがシンプス可塑性発現に重要であるとされる。そこでまず、これらの酵素のシナプス後部に局在する基質タンパク質(の特性)を明らかにすることが必要不可欠と考え、単離シナプス後肥厚部(PSD)内のこれら2種の酵素の基質の性質を調べ、さらに、自己リン酸化型カルモジュリンキナ-ゼの役割を明らかにする目的で、それに対する特異抗体を作製した。 1.大脳PSD中に、ミエリン塩基性タンパク質とは異なる分子量17KのCキナ-ゼ基質を検出した。 2.大脳皮質、海馬PSDには6種の、小脳PSDには4種の主要なカルモジュリンキナ-ゼ基質を認めた。250K基質は、P_<400>タンパク質ないしその類縁タンパク質であった。200K基質はミオシンとの類似性を示した。PSD中の細胞骨格関連のフォドリン、アクチン、チュブリン、カルモジュリンはリン酸化されなかった。 3.カルモジュリンキナ-ゼIIαサブユニットのMet^<281>からCys^<289>に相手するペプチドを人工合成し、リン酸化後、HPLCでリン酸化ペプチド(PYー66)を精製し、兎に免疫した。得られた血清から抗非リン酸化ペプチド抗体成分を吸収した後、IgGを調製した。抗体はELISAでPYー66に対して特異性の高い反応を認めた。Western blottingでは、自己リン酸化型カルモジュリンキナ-ゼIIを認識した。PSD画分に対しても、大脳皮質、海馬の画分で自己リン酸化型α,βサブユニットを認識した。小脳PSDでも、自己リン酸化型α,β,β'サブユニットバンドと反応した。Westernでのバンド出現の時間経過はCa^<2+>非依存性活性の発現経過とよく一致していた。培養細胞では、NMDAあるいは、ionomycin処理でキナ-ゼIIの自己リン酸化が起きたニュ-ロンを染めた。
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