研究課題/領域番号 |
02670523
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
古賀 良彦 杏林大学, 医学部, 助教授 (70104643)
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研究分担者 |
松岡 邦彦 杏林大学, 医学部, 助手
田口 弘之 杏林大学, 医学部, 助手
児玉 憲典 杏林大学, 医学部, 助教授 (30086590)
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キーワード | mismatch negativity(MMN) / 非言語性聴覚刺激 / 3次元電源双極子解 / 精神分裂病 / 自動的処理過程 |
研究概要 |
われわれの研究グル-プは、前年度の研究で、精神分裂病では色彩および言語情報の意識的処理過程に障害があることを、事象関連電位の成分であるP300を指標として明らかにした。今年度は、聴覚情報の自動的処理過程について、mismatch negativity(以下MMNと略す)を指標に用い研究を進めた(註:MMNとは陰性の事象関連電位成分で、N100に続いて出現し、聴覚刺激の自動的検出過程を反映する電位。MMNを測定するには、規則的で同一の周波数のト-ン(基準音)のシリ-ズの中に、逸脱した周波数のト-ンをランダムに混じて提示する。被験者には読書を命じて両方のト-ンを無視させた状態で脳波を記録する。逸脱音による誘発波形と規則音による誘発波形との引算波形をもとめることにより、潜時100ないし200秒前後にMMNを抽出することができる)。 今回、対象には平均年齢に有意差のない精神分裂病患者、健康対照者各14例(いずれも右手きき)を選んだ。基準音は1000Hzのト-ンとし、逸脱音としては、1020、1050、1100、2000HZの4条件を設けた。得られたMMNについて潜時、振幅のふたつの測度に関して群間比較を行うとともに頭皮上分布についても検討した。さらに3次元電源双極子解を求めた。 その結果、いずれの条件でもMMNの潜時および振幅には精神分裂病群と健康対照者群との間に有意の差はみられず、分布にも顕著な差異はみとめられなかった。基準音と逸脱音との差が比較的大きい場合(1000Hzと1100Hz)には、むしろ精神分裂病群の方が潜時が速く振幅も大きいという傾向がみられた。電流多極子の発生源に関しても、2シェルの球体モデルでふたつの双極子を仮定した場合には、両群ともに、MMN双極子発生源は両側の側頭葉に存在することが推定された。 以上の結果は、精神分裂病では、少なくとも非言語性聴覚刺激については自動的検出過程に障害がないことを示すものである。
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