研究概要 |
1.X線照射の条件の設定:X線照射装置は一般放射線治療に用いられている線状加速器(リアニック)を使用した。血液パックに均一な線量を照射し表面線量を増すために、オリ-ブ油を浸み込ませたガ-ゼで血液パックを被包した。血液パックから照射前、15Gyおよび50Gy照射後に採血し以下の実験に供した。 2.リンパ球の不活化に必要なX線線量の検討:血液からリンパ球を分離し、その分裂増殖能に対するX線照射の抑制効果につき ^3Hーthymidineの取り込み率を指標に検討した。同種抗原に対するリンパ球の反応性をみるリンパ球混合培養試験では15Gy照射で完全に ^3Hーthymidineの取り込みは抑制された。Phytohemagglutinin(PHA)およびConcanavalinーA(ConーA)をmitogenとした場合は、15Gy照射で70%の取り込み抑制、50Gy照射では、ほぼ完全に抑制された。GVHDは患者体内での自己リンパ球を同種抗原とした輸血リンパ球の増殖反応と考えられるので、リンパ球混合培養試験が、その病態機序を最もよく反映していると考えられるので、X線照射は15Gyで十分と考えられた。 3.X線照射が赤血球に及ぼす影響:照射前、15Gy照射および50Gy照射後の血液について、以下の項目を検討した。赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン量、ヘマトクリット値、平均赤血球容積。血清ナトリウム、カリウム。赤血球ATP、2,3ーDPG濃度。赤血球浸透圧溶血試験。走査電顕による赤血球形態。いずれにおいても照射前後で有意差のある変化を認めず、50Gy照射の赤血球への影響は認めなかった。 4.X線照射による血小板凝集能の影響:凝集刺激剤としてADP、Collagenを使用したが、照射前後の分離血小板すべてで凝集が起らず、X線照射の影響の有無について検討不能であった。
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