研究概要 |
1.有茎皮弁および島状皮弁の壊死における過酸化脂質の関与および植物由来各種抗酸化剤による壊死予防効果に関する研究 FeCl_3による皮膚ミクロゾームの過酸化脂質産生および植物由来各種抗酸化剤による抑制効果を調ベた。使用した植物由来抗酸化剤の中でellagic acid(EA)が最も強い抗酸化効果を示した。ついでchlorogenic acid(CA),curcumin(CC),α-tocopherol(AT)が中等度の効果を示した。 ラット背部に15×70mmの有茎皮弁、鼠径部に直径2cmの島状皮弁を作製し、対照群、およびEA,CA,AT,CC各投与群に分けた。島状皮弁は製作後14時間阻血状態し再潅流させた。薬物はTris/ethanolに溶解して皮弁作製後1日1回、3日間局所投与した。生着面積測定と組織中の過酸化脂質濃度の経時的測定を行ったところ、両皮弁ともに過酸化脂質濃度上昇と壊死には相関関係が示された。またEA投与群では有茎皮弁、島状皮弁ともに組織中の過酸化脂質濃度上昇が抑制され、皮弁壊死面積の減少が認められた。CCは有茎皮弁にのみ効果が得られた。これら植物由来の抗酸化剤の今後の臨床応用への展望が得られた。 2.ラット鼠径部の脂肪弁の虚血再潅流障害に関する基礎実験 ラット鼠径部に浅腹壁動静脈を茎とする島状脂肪弁を作製し、非虚血対照群と3-11時間まで1時間毎の虚血群に分け、いずれも再潅流7日後に重量を測定した。さらに各虚血群に抗酸化剤であるアロプリノールを投与し、その効果を調ベた。これらの結果、脂肪弁の虚血再潅流障害には虚血そのものによる組織障害に再潅流障害が加わるものと示唆された。従来の島状皮弁モデルでは充分明かにできなかった虚血時間の影響が明瞭に示された。また9時間以上の虚血では、それだけで不可逆性の組織障害がもたらされることが判明した。アロプリノールは主に再潅流障害を予防すると推定された。
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