研究概要 |
1.動物実験 (1)出血性ショックモデルの実験:SDラットを使用し、出血性ショック(平均動脈圧45mmHg)を作製し、これを自己血と2倍量の乳酸加リンゲル液で蘇生し、骨格筋、肝臓の静止膜電位を測定。著者が既に米国で行ったデ-タと同一の結果を再現できた。 (2)出血性ショックの骨格筋細胞障害に対するSOD(superoxide dismutase)とCAT(catalase)の効果:同上のショックモデルで、骨格筋の膜電位に及ぼすSOD+CATの効果を検討した。骨格筋ではショック時脱分極し、蘇生後も再分極しない障害が認められたが、SOD+CAT処置が蘇生後の再分極化を促進した。この結果は著者が大動脈遮断による下肢虚血の結果(J.Yokota,et al:Role of leukocytes in reperfusion injury of skeletal muscle after partial ischemia.Am.J.Physiol.257:H1068ーH1075,1989)と一致し、ショックモデルでも単なる虚血・再潅流時と同様の細胞膜障害の存在する可能性を示唆させた。この結果は既にまとめCirculatory Shockと単行本『虚血と臓器障害』に投稿した(裏面参照)。 (3)出血性ショックの肝細胞障害に対するSOD+CATの効果:同上のモデルで肝細胞膜電位を測定、同時にmicrosphere techniqueで血流量を凍結バイオプシ-でATP含量を測定した。骨格筋と異なり、ショック時の脱分極は蘇生後正常に復したが、門脈血流量とATP含量は低値にとどまった。SOD+CAT処置により、門脈血流量の低下を改善させることができた。このことから、ショック後の肝細胞障害を直接的な細胞膜障害よりも、腹腔の循環障害の観点から捕える必要を示唆させた。この結果は、1991年外科学会で報告予定であり、論文発表をも予定している。 2.臨床実験 特注マニピュレ-タの入手が遅れたが、現在、研究中である。
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