【目的】本研究は、虚血再潅流後およびショック離脱後の臓器障害を細胞形質膜の電気生理学的機能に焦点を絞り、フリーラヂカルの各種消去剤投与による効果を検討してその予防法や治療法の基礎を確立することを目的とした。 【研究成果】1.出血性ショックモデルを使用し、骨格筋、肝臓および潅流心筋の静止膜電位を微小電極法で測定し、膜電位の再分極障害の臓器間の特性を検討した。活性酸素による肝細胞の膜障害は否定的であり、既に報告した興奮性細胞(心筋、骨格筋)とは様相を異にしていた。これに対し、活性酸素消去剤投与により、蘇生後の門脈血行が改善したことから、小腸での活性酸素障害による腸管血行障害、または肝臓内での活性酸素による内皮細胞障害の存在が示唆された。2.以上の実験より、腸管の虚血再潅流障害は新しい研究領域であろうと判断し、上腸間膜動脈遮断モデルを作成し、新しい実験計画の展開した。腸管の虚血再潅流で、真菌多糖類、エンドトキシンが血中に有意に流入することから、腸管透過性を亢進させる再潅流障害が存在した。3.一方、大動脈遮断による下肢骨格筋虚血再潅流モデルで、鉄キレート剤deferoxamineの効果を検討した。鉄キレート剤は再潅流時の細胞膜障害を予防でき、かつ過酸化障害をも抑制しえた。 【総括】今迄の研究で、骨格筋や心筋などの興奮性細胞では、虚血再潅流に際し細胞膜の過酸化が生じ静止膜電位の再分極障害の生じることを示した。加えて、この機序に、白血球依存の活性酸素が関与し、SODやcatalase以外に鉄キレート剤で予防しうることを証明し、臨床応用に近づくことができた。本研究の経過中、腸管の虚血再潅流モデルを開発したことを契機に、今後、腸管からのbacterial translocationと活性酸素の関係を研究する糸口ができた
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