成熟ネコを用い、sodium pentobarbitalの腹腔内投与による全身麻酔下で33%HRP(40mg)を膀胱頂部、直腸にマイクロシリンジにて分注した。HRP注入後48時間の生存期間をおき、深麻酔下で、経左心的に灌流固定した。固定後直ちに、脊髄後根神経節(DRG)、交感神経幹神経節(幹神経節)、脊椎前神経節を摘出し、クリオスタットにて40μm厚の凍結切片を作成した。その後、TMB法にて組織化学的処理を行い、HRP標識細胞を観察し、膀胱および直腸の神経支配を検討した。 本研究により以下のことが判明した。 膀胱の求心性支配は、下腹神経を主な経路とする腰髄DRGからの支配と骨盤神経を主な経路とする仙髄DRGから支配に大別でき、両者の比率は標識細胞数で約1:4であった。 膀胱の幹神経節由成の交感神経支配は、下腹神経を主な経路とする第6腰部幹神経節より吻側からの支配と骨盤神経を主な経路とする第7腰部幹神経節より尾側からの支配に大別できた。両者の比率は標識細胞数で約1:3で、後者が優勢であり、従来、仙髄副交感神経の経路とされている骨盤神経は、膀胱の交感神経支配にとっても重要な経路であった。 膀胱の交感神経支配は求心性支配より優勢であり、交感神経支配では、幹神経節からの支配が脊椎前神経節よりも優勢であった。 直腸の神経支配に関してしは、現在施行中である。 これらを基礎資料とし今後、神経再生についての検討を行う予定である。
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