研究概要 |
成熟ネコを用い、全身麻酔下で33%HRPを膀胱、直腸およびこれらを支配する自律神経に注入し検討した。HRP注入後48〜72時間の生存期間を置き、深麻酔下で灌流固定を行った。固定後、直ちに脊髄神経節(DRG)、交感神経幹神経節(幹神経節)、脊椎前神経節、骨盤神経叢、膀胱を摘出しクリオスタットにて凍結切片を作成した。その後、TMB法にて組織化学的処理を行い、対比染色後検鏡し、HRP標識細胞、HRP標識繊維を観察し検討した。また自律神経再生に関する研究では、骨盤内臓神経を切断または吻合後数ヵ月の生存期間を経たのち、神経の再生を前述のHRP法ならびに電子顕微鏡を用いて検討した。 本研究により以下の事が判明した。 直腸、膀胱の神経支配に関する検討:求心性神経支配は両者とも,主として、腰髄DRG、仙髄DRGから支配を受けるが、直腸の方が膀胱より腰髄DRGからの支配が少ない。幹神経節かりの交感神経支配では、両者とも腰部DRG、仙、尾部DRGから支配を受けるが、直腸の方が尾部DRGに多くのHRP標識細胞が認められた。 膀胱の求心性神経繊維の走行に関しての報告は多いが、観察された神経繊維の起始に関しては不明である。本研究で、仙髄DRGにHRPを注入することにより、仙髄DRG由来の求心性神経繊維が骨盤神経叢、膀胱で観察された。HRP標識繊維は膀胱の各部で認められたが神経終末像は同定できなかった。また、骨盤神経叢では標識繊維は主に神経束として認められたが、神経叢に存在する神経節細胞間を走行する単一の標識繊維も観察され、仙髄DRGからの求心性繊維が、これらの自律神経節細胞に側副枝を送る可能性が示唆された。 骨盤内臓神経を切断直後に吻合し、3ヵ月以上経過した実験群では骨盤内臓神経を経由する膀胱支配神経の再生が示唆された。電子顕微鏡で吻合部を観察すると神経繊維の旺盛な再生が認められた。
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