平成3年度に自律神経の再生について検討した結果、骨盤内臓神経を切断後直ちに吻合した実験で自律神経は形態学的には、3ヶ月以上経過すると盛んな再生がおこることが示された。今年度は、片側骨盤内臓神経を切断し、切断部に下肢の脛骨神経を移植した。4ヶ月経過後移植部を摘出し、移植部とその中枢側および末梢側を調べた。神経を移植した骨盤内臓神経は、移植前に比べ数倍に太くなり、電子顕微鏡にて無数の有髄および無髄神経が観察され、神経再生の盛んなことがうかがえた。また下腹神経の吻合例でも同様な現象が認められた。 また、直腸癌術後の症例で問診により詳細に検討した結果、神経を温存した例では膀胱機能、排便機能の良好なものが多く認められ、骨盤内臓神経や下腹神経などの自律神経が直腸、膀胱の機能と密接な関係があることがうかがえたが、神経を温存したと思われる症例でも重大な機能障害を来すものがあり、単純に神経を温存するだけでは解決できない問題もあると思われる。また、これらの機能障害は術後3ヶ月ごろより明らかに改善する傾向があり、損傷(切断だけでなく、術中の操作による変性など)を受けた自律神経が再生する結果ではないかと考えた。これらの結果より自律神経の吻合、移植は機能回復のために有用であると推測された。
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