研究概要 |
1.臨床研究 肝移植へのbridgeとしての人工肝補助の有用性を検討した。末期原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者に人工肝補助を適用し、その効果及び移植までの間の延命が可能か否かを追求した。 (1)今回新しく1例の患者に本治療が導入された。症例は55才、腹水を呈する末期PBC患者で計6回の治療が施行されたが症状の著名な改善には到らず1ヶ月目に死亡した。Plasorbaによる吸着療法で計30000ccの血漿治療を施行したが腹水のコントロ-ルが困難であり、移植を前提として延命を計るには新鮮血漿を使用したPlasma exchangeを短期間に集中的に施行する必要があると考えられた。 (2)現在まで計3例のPBC症例に長期人工肝補助が施行された。うち1例では2年6ヶ月、計79回施行され本治療法の安全性が確認された。2例では症状の明きらかな改善がみられた。長期施行例ではリンパ球のPHA,ConAに対する反応性が回復し、又OKT4/OKT8の上昇が認められたがICG値の改善はみられなかった。 (3)長期人工肝補助が肝機能そのものの回復を促すことが出来るか、又末期肝不全に対しどこまで延命が可能かにつき今後も多数の症例の蓄積が必要と考えられた。 2.実験的検討 薬剤による肝補助としてCa^<++>ブロッカ-の温阻血肝保護効果を検討した。 (1)ラットを使用し温阻血を作成しCa^<++>ブロッカ-(Verapamil)の効果を検討した。Verapamil投与群では生存率の著明な向上が認められ肝の温阻血障害に対する有効性が確認された。その機序として血管拡張作用、ミトコンドリア保護効果が重要な事が示唆された。 (2)今後は肝保護効果のあるPGE1やCa^<++>ブロッカ-と人工肝補助を組み合わせた拒絶反応治療法の研究の推進が必要と考えられた。
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