1.臨床研究 肝移植へのbridge useとしての人工肝補助の有用性を検討した。末期原発性胆汁性肝硬変(PBC)患者に人工肝補助を適用し、その効果及び移植までの延命が可能か否かを追求した。(1)現在まで計3例のPBC症例に長期人工肝補助が施行された。うち1例では2年6ヶ月計79回施行され本治療法の安全性が確認された。(2)自覚的には皮膚掻痒感の改善が認められ、又ビリルビン値の改善、Cholesterol値の低下を認めPBC患者におけるCholestasis改善に著明な効果のある事が確認された。 (3)当院三内科ではビリルビン10mg/dl以上に達したPBCの生存は平均4ー5ヵ月である。本研究では人工肝補助治療により末期PBC3例中2例で1年以上の生存を認めた。この事より末期PBCでは人工肝補助による延命が期待出来、肝移植へのbridge useとして充分意義あるものと考えられた。(4)延命効果の機序として高ビリルビン血症、cholestasisの改善による肝細胞に対する負荷の軽減が考えられた。又長期施行例ではリンパ球のPHA、ConAに対する反応性が回復しOKT4/OKT8の上昇が認められたがICG値の改善はみられなかった。(5)長期肝補助が真に肝細胞機能の回復を促す事が出来るか、又末期肝不全に対しどこまで延命が可能か、今後も多数の症例の蓄積が必要と考えられた。2、実験的検討 薬剤による肝補助としてCa^<++>ブロッカ-の温阻血肝保護効果を検討した。(1)ラットを使用し温阻血を作成しCa^<++>ブロッカ-(Verapamil)の効果を検討した。verapamil投与群では生存率の著明な向上が認めら肝の温阻血障害に対する有効性が確認された。その機序として血管拡張作用、ミトコンドリア保護効果が重要な事が示唆された。(2)今後は肝保護効果のあるPGI_2やCa^<++>ブロッカ-と人工肝補助を組み合せた肝移植術前術後管理の研究の推進が必要と考えられた。
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