心筋梗塞後の重篤な不整脈の発生の起源が梗塞部周辺に存在することは衆知の事実であるが、虚血部と非虚血部の境界領域における局所循環動態は虚血再潅流後の心筋の末梢循環の異常と近似した状況にあるがわれわれは、心筋梗塞時の梗塞巣周辺から発生する重症不整脈の原因としてヒスタミンを主とするdiamineの関与に注目し以下の実験を行った。 実験動物としてwister系ラット18匹を用い、ペントバルビタ-ルによる静脈麻酔下に人工呼吸を行ない、大腿動脈に動脈圧モニタ-用のカニュ-レを挿入し標準肢誘導による心電図連続モニタ-を行った。開胸後心膜を切開し心臓を露出した。実験ラットを以下の2群に分けた。 I群:生理食塩水0.2mlを尾静脈より注入し、10分後左前下行枝を結紮した群(n=9).II群:Diamine Oxidaseを10単位/kgを尾静脈より静注し10分後に左前下行枝を結紮した群(n=9)。両群において左前下行枝結紮前と結紮後30分間において心電図、動脈圧を連続モニタ-した。心室性期外収縮(毎分の平均の数)、short run、心室性頻拍(VT)および致死的心室細胞(Vf)の頻度を対比検討した。PVCの頻度はI群で18.5±7/分(M±SE)、II群10.5±11/分(M±SE)でII群に少ない傾向がみられ、short runあるいはVTの頻度はI群で9匹中8匹(88.9%)、II群で9匹中2匹(22.2%)でII群で有意に頻度が少なかった。Vfによる死亡はI群9匹中3匹(33.3%)、II群9匹中2匹(22.2%)で有意差はなかった。以上の結果からDiamine Oxidaseの前投与は致命的なVfの防止に有効性は見い出せなかったものの、short runあるいはVTなどの重症不整脈の発生抑制に有効であることが確認された。この事から、心筋梗塞巣周辺における不整脈発生の因子として局所におけるヒスタミンを中心とするdiamineの関与が存在することが示唆された。
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