肝炎・肝癌自然発症LECラットの肝細胞増殖機構の制御に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02670559
• 研究機関: 北海道大学
• 研究代表者: 武市 紀年 北海道大学, 医学部, 助教授 (40002133)
• キーワード: LECラット / 肝炎 / 肝癌 / 銅代謝異常 / 銅負荷 / 銅の吸収・排泄 / 自由銅

研究概要

最近、LECラットにおける肝傷害の発症は銅の代謝異常によることが明らかにされている。銅はCytochrome oxidase,Superoxide dismutase,Dopamin αーoxidase等の生体必須酵素の主成分であり、細胞の増殖・代謝に必要な重金属であるが、遊離イオン自体は細胞に有害である。前述の必須酵素の銅イオンを輸送するシステム・代謝のメカニズムは未だ解明されていない。
われわれは銅負荷がLECラットの肝傷害を増強するか否か調べ、銅の吸収、排泄経路について検討した。その結果、肝炎発症前のLECラットに銅を経口投与したところ、投与量依存性に肝炎の発症が促進された。しかし、銅代謝異常のない正常LEAラットに同量の銅を投与しても肝炎は発症しなかった。銅を投与し肝炎を発症したLECラットの組織像は巨大肝細胞の出現など、LECラットの自然発症肝炎と同様の組織像を示した。このことは、銅の投与による急性毒性が出たのではなく、付加した銅が代謝異常により肝蔵に急速に蓄積され、肝細胞傷害を起すレベル以上に蓄積したため早期に肝炎を発症したと考えられる。
銅は消化管より吸収され肝蔵に入り一部は蛋白として結合して貯蔵されるが、その大部分は胆汁より排泄され、生体内の銅は一定に保たれている。銅を投与したLEAラットの血清銅の値は無処置群と同じであったが、LECラットでは銅の投与量依存的に高値を示した。これらのことにより、LECラットでは、銅はある程度正常に吸収されるが、銅の排泄機構に異常があり、肝臓中に銅が蓄積すると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Namieno,T.,et al.: "Investigarion of infectious agents causing spontaneous hepatitis in LEC rats." The LEC Rat:A new animal model for hepatitis and liver cancer,SpringerーVerlag. 70-80 (1991)
• [文献書誌] Namieno,T.,et al.: "Combined immunodeficiency in LEC rats with sopontaneus hepatitis." The LEC Rat:A new animal model for hepatitis and liver cancer,SpringerーVerlag. 196-208 (1991)
• [文献書誌] Namieno,T.,et al.: "Progress from chonic hepatitis to liver cancer in longーsurving LEC rats." The LEC Rat:A new animal model for hepatitis and liver cancer,SpringerーVerlag. 282-297 (1991)
• [文献書誌] Namieno,T.,et al.: "Clinical and pathological Characteristics of LEC rats with spontaneous hepatitis." The LEC Rat:A new animal model for hepatitis and liver cancer,SpringerーVerlag. 41-53 (1991)
• [文献書誌] Tateishi,K.,et al.: "Reduced samatostatinーlike immunoreactivity in the brain of LEC rats with hepatic encephalopathy." Regulatory Piptide. 36. 131-139 (1991)
• [文献書誌] Nagayama,S.,et al.: "Occurrence of autoーimmue antibodies to liver microsomal proteins in association with fulmnant hepatitis in the LEC strain of rats." Biochem.Biochys.Res.Common.179. 1139-1140 (1991)