研究概要 |
先に申請した短腸症候群に対する腸管延長術開発のための腸管壁吻合臓器として当初試みた大網は,その組織としての脆弱性・比較的粗な血行密度などから不利であることが明らかとなり,その後我々は脾を中心に腸管固定術を行っている。腸管脾臓縫着術による腸管壁と脾との血行確立は前記腸管延長術の基礎となる他,二重の門脈血行を有し(本来の腸間膜系及び脾)栄養素吸収効率のよい腸管reservoir形成にもつながると期待される。我々はこれまで2つの方法で腸管壁と脾実質との吻合を試みてきた。1つは圧挫法(腸管壁全層と脾実質とを併せて持続的圧迫で壊死に陥らせる方法)で,他の1つは縫着法(脾被膜に漿膜を除去した腸管を縫着する方法)である。圧挫法では1週間以内に組織学的な腸脾吻合が完成する利点があるが以下の欠点を有することが明らかとなった。即ち腸壁全層の潰瘍を生じ脾実質が直接腸管腔にさらされるが腸粘膜の再生被覇はなかなかみられず,腸内細菌の持続的侵入をうけるために慢性脾炎が生ずる。即ち脾内にmicroabscessが多発し一部脾被膜を穿破して腹膜炎をきたしたり,脾内リンパ球の消耗涸渇による著明な脾萎縮をみることになるという点である。一方縫着法に関して 2は脾腸間の血行完成過程を主に選択的脾動脈造影法により検討した。その結果縫着部の他に脾被膜と腸管漿膜の間での血行完成を術後7ヶ月で確認し得た。また脾炎を生ずることも少ないことから,縫着法は血行完成に長期間を要するという欠点はあるものの安全で比較的安定した結果が期待されると思われる。現在我々は脾に吻合された腸管の栄養素吸収能評価のために^<11>Cーメチオニンの腸管腔内投与後経時的に肝への放射活性集積動態を解析する方法を開発し報告してきた。本法は今後極めて有用な腸管機能評価手段になるものと考えられそのrefinementをすすめているところである。
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