研究概要 |
(目的)成長期ラットの短腸症候群モデルで消化管(特に十二指腸と回腸)の発育に及ぼす成長ホルモンの効果を検討した。(材料と方法)SD系4週雄性ラットに,90%小腸切除を施行し成分栄養剤(EDーP)で1週間飼育後、以下の実験群を作製した。1群(90%小腸切除),2群(90%小腸切除・成長ホルモン補充)、1と2群はEDーPのpairーfeedingとし,切離再吻合し自由摂食させた同日令のラットを対照とした。成長ホルモンの補充は1,3および6日目にジェノトロピン(遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤)1mlu/g体重を腹腔内注入した。9日目に脱血死させ,以下の項目で検討した。(検討項目)摂取総エネルギ-量、窒素平衡、血漿総ソマトメジンC,体重,尾長,十二指腸と回腸粘膜の形態学的定量,単位長さ当りの粘膜湿重量,蛋白量,およびDNA量,(結果)1)摂取総エネルギ-量:1,2群で差みられず,総摂取量は対照の約60%であった、2)窒素平衡:1,2群で差なし、3)血漿総ソマトメジンC:1群平均4.4u/ml,2群平均6.5u/mlと補充群で高い。しかし対照の平均15.4u/mlに比し低値、4)身体発育:体重増加率は1,2群で差なく、対照に比し低値、5)粘膜絨毛高:1,2群間で差なし、対照に比し両群とも絨毛高が著明に増加、6)単位長さ当りの粘膜湿重量:1群十二指腸(D)平均42.7mg/cm,回腸(I)平均42.7mg/cm,2群平均D51.9,143.0mg/cmであった。7)単位長さ当りの粘膜蛋白量およびDNA量:対照に比し蛋白量は、Dでは1群平均148%,2群133%,IではI群335%,2群333%,DNA量はDでは1群189%,2群143%,IではI群376%,2群312%とD,Iとも両群での過形成(特にIで強く)を示唆した。蛋白量/DNA比は2群で高い傾向がみられた、いずれも両群間で有意差を認めなかった。結論:90%広範小腸切除モデルでは成長ホルモンの消化管の発育に及ぼす補充効果は認めなかった。
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