平成2年度は研究初年度であり、研究実施のための環境整備、研究試料の蓄積および遺伝子操作技術の安定性習得に努力を費やしている。 (1) 進行胃癌の手術症例について、それぞれの組織型(乳頭状腺癌、管状腺癌、印環細胞癌など)に従って組織片を採取し、DNAおよびRNA抽出のための試料として凍結保存している。更に転移を伴う症例においては、転移巣の組織片も凍結保存としている。試料数としては、主実験を開始するにはまだ不足なことから、平成3年度においても試料の収集、保存を続ける予定である。 (2) ヒト胎盤を試料として、DNAおよびmRNAの抽出を行った。mRNAについては、およそ3000ないし5000塩基対のmRNAを安定して抽出することができ、ほぼ完全長mRNAの抽出が可能となった。胎盤抽出DNAおよびRNAは、胃癌組織との対照試料として使用する。 (3) mRNAからcDNAを作成し、これを哺乳類細胞に於いて発現させ機能を解析する為に、SV40ウィルスの複製開始点を含んだ発現ベクタ-を調整した。主として岡山ーバ-グ法に従って、cDNAライブラリ-を構築する予定である。 (4) 現在本学ではアイソト-プを用いた実験の実施が困難な状況にあるが、平成3年度再開を目指して、試薬類、実験器具、試料などの整備を進めている。アイソト-プを用いて、サザンブロッティング、ノザンブロッティング、およびディファレンシャルハイブリダイゼ-ションなどを行なう予定である。
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