研究課題/領域番号 |
02670566
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 公孝 東京大学, 医学部・第1外科, 助手 (60221321)
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研究分担者 |
沢田 俊夫 東京大学, 医学部・第1外科, 助手 (50143441)
武藤 徹一郎 東京大学, 医学部・第1外科, 助教授 (20110695)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / Crohn病 / 潰瘍性大腸炎 / vasoactive intestinal peptide / neuropeptides / S100蛋白 / mucosal immunity |
研究概要 |
Crohn病(CD)33例、潰瘍性大腸炎(UC)24例、大腸癌の非癌大腸組織(control)34例の切除標本から炎症部、非炎症部にわけて組織片を採取し、免疫組織化学的手法でVIP及びS100蛋白陽性神経線維の単位面積当りの長さと神経節細胞数を画像解析装置を用いて定量的に測定した。その結果(1)粘膜固有層においてはVIP陽性神経線維はCD(3443±504,mean±SEμm/mm^2)およびUC(1556±438)ともにcontrol(8969±763)より有意に減少していた。この減少は炎症の程度に従って逆比例していた。S100蛋白陽性神経線維もCD(5272±544)、UC(3814±631)ともにcontrol(9526±629)より減少していたが、その程度はVIP陽性神経線維の減少よりわずかであった。(2)粘膜下層においてはVIP陽性神経線維はCD(446±56)、UC(365±56)ともにcontrol(714±65)より減少していた。しかしS100蛋白陽性神経線維はCD、UC、controlで有意差がなかった。(3)粘膜下神経叢(Meisner's plexus)においては、VIP陽性神経細胞はUC(23±3mean±SE個/cm)ではcontrol(37±3)、CD(39±3)に比し減少していたが、全神経節細胞数には差がなかった。(4)筋層神経叢(Auerbach's plexus)においては、VIP陽性神経節細胞数は粘膜下神経叢より少なかったが、CD、UC、controlには差がなかった。以上の結果から炎症性腸疾患ではVIP陽性神経線維が粘膜固有層でも粘膜下層でも著名に減少していることが明らかとなった。この減少はCDでもUCでもみられ、また炎症の程度に応じて減っていることから炎症に伴う二次的変化と考えられた。しかしVIPがリンパ球の増殖を抑制し、リンパ球の腸管およびPeyer's patches Λの遊走を抑制することが報告されているので、VIPの減少が炎症性腸疾患の成因、病態の遷延化に局所免疫の面から重要な役割を演じている可能性が示唆された。
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