研究概要 |
癌細胞が転移能を獲得していく過程でどの様なDNA変化がおこっているのかを、ミニサテライトDNAPcー1,Pcー2を用いたサザンブロット解析法により検討した。まずFM3A細胞にinーvitroで変異原物質として知られているケルセチンを投与し培養した。55μMのケルセチン処理した細胞は軟アガロ-ス培地上でコロニ-を形成するが,そのコロニ-からDNAを抽出し,Pcー1,Pcー2でサザンハイブリダイゼ-ションを行うと,コロニ-形成率59%で26クロ-ン中,9クロ-ンにDNA変異が認められた。一方,無処理群ではDNA変異は全く認められなかった。この変異原によるDNA変異は,紫外線を使った別の実験系からケルセチンのもつ細胞障害性によるのではなく,ケルセチンのもつ特異的な作用によりおこることが確かめられた。北大・癌研病理の報告によるとBMTー11細胞をケルセチン処理すると,もともと転移能の低い細胞の一部が高転移系の細胞に変化することが知られている。我々は以前BMTー11細胞をinーvitroでケルセチン処理すると,FM3A同様Pcー1,Pcー2において高頻度の組み換えがおこることを確かめている。従ってBMTー11細胞を使った転移実験から,腫瘍細胞がヘテロ化し転移能を獲得する原因の一つには,高頻度のDNAの組み換え変異が誘導され遺伝的不安定性が高まることによると考えられた。また,FM3A細胞を用いた転移実験でも,BMTー11細胞と同様の結論が得られるのではないかと考え,今後解析をすすめていくつもりである。
|