研究概要 |
ペプロマイシン封入W/o/W型リピオド-ルエマルション(以下LE)を調製した。LE粒子は平均8μmであり、内水相にペプロマイシン(以下PEP)を20mg/リピオド-ル2.4mlを封入した。本LEの特徴は、注入部停滞性が強いが、リンパ指向性,リンパ節移行性,リンパ節内停滞性に富み、X線学的にLEの検出が可能である。実験は、雑種成犬の胸部中部食道の粘膜下層へ内視鏡的にLEをPEP量として10〜20mgを注入し行った。経時的PEP血中濃度と,1週間後に屠殺解剖し、胸腔内,腹腔内臓器と後縦隔リンパ節を摘出し各々のPEP濃度を測定した。PEP血中濃度は、注入後3時間より検出不能となった。注入部食道のPEP濃度とLE停滞は高度であったが,肺、脾、肝、腎、胃のPEP濃度は低く、LE検出は認めなかった。後縦隔リンパ節は、1頭平均5.7個を摘した。LEを検出したものは1頭平均1.3個であったが、LEの停滞を認めたリンパ節のPEP濃度は、LE停滞を認めないリンパ節に比し有意に高値を示した。またコントロ-ルとして、生食溶解PEP注入群との比較では、LE停滞の有無にもかかわらず、LE投与群のリンパ節PEP濃度は有意に高値を示した。このことよりLEの組織内停滞性と薬剤徐放性効果が実証され,食道癌及びリンパ節転移治療への応用が期待された。血液生化学検査においては,LE投与群では,一過性に肝機能の軽度の上昇を認めたが,一週間後には,軽快している。病理組織学的には,食道注入部の粘膜下層の著明な肥厚とリンパ管の拡張,形質細胞の細胞浸潤を認め,リンパ節においても辺縁洞,中間洞の拡張を認め同様な細胞浸潤を認めるとともに、ズダンIII染色においては、同部でのLE渟滞を証明した。
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